非平衡揺らぎ


Bond Directed Percolation
(1+1)次元有向ボンド浸透の例。中央の始点から、ボンド(赤)を伝って下の浸透が広がっている。下にしか浸透しないので方向付きと呼ばれる。下方向を時間と見なすと伝染病の伝搬現象など様々な反応拡散現象を表すことに対応する。
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環境と相互作用をする時間発展系はしばしば平衡状態とは異なった状態を取ることがよくあります。このような非平衡系の一般論はありませんが、平衡系と同じく普遍性を持つ幾つかの重要な非平衡系のクラスが知られています。例えば、有向浸透現象、非対称単純排他過程などがあります。

これらの系に存在する非平衡系特有の揺らぎを理解することは、単に一つのモデルや現象の研究だけにとどまらず、自然界に内在する多くの現象に対する共通する理解を得ることに対応すると考えられています。例えば、浸透する状態を病気だと考えると伝染病のモデルと考えることもできます。

単純なモデルであっても、多くの未解明な問題が残っており、非平衡統計物理として、現在も盛んに研究が行われています。我々は特に多体問題のための新しい計算手法(テンソルネットワーク)を駆使して、この興味深い現象に取り組んだ研究を行っています。

参考文献
[1] Kenji Harada and Naoki Kawashima: Entropy Governed by the Absorbing State of Directed Percolation, Physcal Review Letters 123 (2019) 090601. DOI: 10.1103/PhysRevLett.123.090601
[2] Kenji Harada: Universal spectrum structure at nonequilibrium critical points in the (1+1)-dimensional directed percolation, arXiv:2008.10807.

 

助教 原田 健自

京都大学 情報学研究科 先端数理科学専攻 非線形物理学講座