今日では、ネットワーク結合力学系と見なせる様々な現実の系から、かつて経験したことがないレベルで大量のデータを取得することが可能になってきました。
例えば、神経を基板上に培養し、発火活動を数ヶ月モニターすることで、神経ネットワークの成長過程をとらえることができます。
輸送システムのネットワークも膨大なデータを得ることが可能です。それらのデータを解析し有効に役立てる事は、重要な課題で、様々な統計解析の手法が提案されています。
一方で、現実世界では一般に非線形性が重要で、そこから様々な興味深い性質や機能が生じる場合が多く見られます。
統計モデルを非線形に拡張する様々な手法が提案されていますが、ここでは、力学系の構造安定性を指針として統計モデルを構築し、データ解析からネットワーク結合力学系を推定することを目指しています。その際問題となるのは、膨大なパラメータを如何に効率よく探索し推定するかですが、計算機の性能と現代統計科学の手法(ベイズ推定や様々な拡張されたモンテカルロ法)を用いることで、この困難を乗り越えることが可能となりつつあります。
例えば、神経ネットワークの結合強度やニューロンの発火特性を推定すれば、脳などの高度な機能がどのような原理で発現するのか、その秘密に迫ることができるのではと考えています。この手法は様々な現実のデータ(例えばリズムを持った集団など)を解析する際にも有効であると考えており、研究を進めています。
教授 青柳 富誌生 | |
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