非線形科学とその周辺セミナー「剛体球系の分子シミュレーションとその応用-結晶化、粗大化、ガラス-」2019/6/24

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下記の通り「非線形科学とその周辺」セミナーを開催致します。
ご関心のある方はぜひご参加下さい。

講演題目:「剛体球系の分子シミュレーションとその応用-結晶化、粗大化、ガラス-」
講演者:礒部雅晴
所属:名古屋工業大学
日時:平成31年6月24日(月)15時~
会場: 京都大学吉田キャンパス 総合研究8号館講義室3(3階)(マップの59の建物)

要旨:
分子シミュレーションの創始者の一人Berni J.Alder 氏は,1950 年代にWainwright 氏
と共同で剛体球系の分子動力学法の開発に成功した.この新しい方法論を用い理論では
決してわからなかった「剛体球系の相転移」(いわゆる「アルダー転移」)の存在を
示した.この業績は,その後の電子計算機を使った統計物理学や分子シミュレーション
研究の発展の大きな原動力となったことはよく知られている[1].剛体球系においては
近年,Werner Krauth 氏(ENS-Paris)らによる棄却のないEvent-Chain モンテカルロ法が
開発され[2],2 次元剛体円板系の融解問題[3,4]や3 次元剛体球系の結晶化への緩和
過程[5]のみならず,ガラスのモデル系やスピン系,連続ポテンシャル系などにも適用され,
高速計算が可能な方法論として大きな注目を集めている.
講演者は,剛体球系の高速イベントドリブン型分子動力学法[6]を使って20 年近く,
剛体球系を中心とした研究を遂行してきた[7].本講演では最近の3 件の国際共同研究,
(i) Krauth 氏とのEvent-Chain モンテカルロ法を使った「3 次元剛体球系の結晶化」[5],
(ii) Chandler 氏(U.C.Berkeley),Garrahan 氏(U. of Nottingham)らとの「動的ファシ
リテーション(DynamicFacilitation)理論」の拡張と「2 成分剛体球ガラス系での検証」[8],
(iii) (ii)の実験的検証として,香港グループの高密度コロイド実験との比較や高密過冷却
液体で生じる新しい緩和機構の発見(string-repetition)[9],などを中心に「結晶化、
粗大化、ガラス」をキーワードとして最新の成果も含めて簡単に紹介したい.

[1] M. Isobe: “Hard Sphere Simulation by Event-Driven Molecular Dynamics: Breakthrough,
Numerical Difficulty, and Overcoming the issues”, Chapter 6 in Advances in the Comutational
Sciences — Proceedings of the Symposium in Honor of Dr Berni Alder’s 90th Birthday, World
Scientific, (2017), pp.83-107.
[2] E. P. Bernard, W. Krauth, and D. B. Wilson: Phys. Rev. E 80 (2009) 056704.
[3] E. P. Bernard, W. Krauth: Phys. Rev. Lett. 107 (2011) 155704.
[4] M. Engel, J. A. Anderson, S. C. Glotzer, M. Isobe, E. P. Bernard, and W. Krauth: Phys. Rev.
E, 87 (2013) 042134.
[5] M. Isobe and W. Krauth: J. Chem. Phys. 143 (2015) 084509.
[6] M. Isobe: Int. J. Mod. Phys.C 10 (1999) 1281.
[7] M. Isobe: Mol. Sim. 42, (2016) 1317.
[8] M. Isobe, A. S. Keys, D. Chandler, and J. P. Garrahan: Phys. Rev. Lett. 117, (2016) 145701.
[9] C.T.Yip, M. Isobe, C.-H. Lam et al. (2019) in preparation
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〇関連資料
・分子シミュレーション夏の学校テキスト2018(解説論文5編)
http://stat.fm.nitech.ac.jp/~isobe/text_for_22thSSMS.pdf
・文献[4]は、Physical Review E 25th Anniversary Milestones
https://www.nitech.ac.jp/news/press/2018/7085.html
・文献[8]は、EurekAlert! 掲載
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-12/niot-aod120616.php

問い合わせ先:宮崎 修次, syuji   アットマーク i.kyoto-u.ac.jp