大自由度カオスへのアプローチ-水滴落下系を舞台として-

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講演題目『大自由度カオスへのアプローチ-水滴落下系を舞台として-』
講演者:秦 浩起
所属:鹿児島大学 学術研究院 理工学域(理学系)
日時:平成28年8月22日(月)16時30分~17時30分
会場:京都大学吉田キャンパス 総合研究12号館003講義室(地階)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/yoshida/map6r_y/ の54の建物

概要:
大自由度カオスを捉える方法論を,水滴落下系を舞台として探る試みについて報告する。
言うまでもなく,一般に大自由度非線形系は大自由度の微視的基礎方程式に従うが,そこから生成される巨視的挙動は何らかの巨視的物理量Xとそのダイナミクスで記述される可能性がある。実際,水滴落下系[1]は,流量の少ない遅い運動(周期運動や低次元カオス)では,n滴目の落下直後の水滴の質量M(n)がその役割を果たしているように見える[2]。しかしながら,そのダイナミクスを基礎方程式から得ることはできず,流量の大きい運動(周期運動や高次元カオス)ではどのような物理量がその役割を果たすのかも明らかでない。
そこで我々は,実験,数値実験に基づいて前述の巨視的物理量Xとそのダイナミクスを探りたい。実際は,Xを知ることはできないだろうが,その存在を通して,巨視的物理量の時間発展や巨視的物理量間の関係を見出せる可能性があると考えている。講演では,その試みについて議論する。なお,水滴系では,n滴目の落下時の水滴の形を次元圧縮した巨視的物理量Y(n)から次の落下までの時間T(n+1)の関係を見出す(予測する)ことにある程度成功している。

[1] R.Shaw, “The dripping faucet as a model chaotic system” (Aerial
Press, Santa Cruz,1984); 佐藤, 津田訳
「水滴系のカオス」(岩波,2006)。水滴落下系は、流量一定のパイプの先端から水が流れ出る系で,パイプ先端に滴を形成し、滴がちぎれる運動を繰り返す。その振る舞いは、流量を制御パラメターとして,周期運動や低次元カオス、高次元カオスといった多様な非線形現象を示す。
[2] 清野, 勝山, 日本物理學會誌 55,247(2000)およびその参考文献。
[3] H. Suetani, K. Soejima, R. Matsuoka, U. Parlitz and H. Hata, PRE,
86, 036209(2012).
[4] 秦,前田 日本物理学会第71回(2016)年次大会 20pPSA-56.