射影演算子法の大偏差統計関数導出への応用


森肇が射影演算子法を用いてブラウン運動を解析してからおよそ半世紀が経ちました。

この手法をカオス力学系に適用すると、カオス的に変動する力学変数の二時間相関関数について、閉じた方程式が得られます。

これは記憶項を含み、解析が困難ですが、藤坂博一らは状態空間を拡張することで記憶項を無視し、二時間相関関数を近似的に求める手法とともに、これを用いて大偏差統計関数を計算する手法を提唱しました。

藤坂は道半ばで急逝しましたが、彼の基本的な考え方に従って、無数にある状態空間の拡張の仕方の中で、時間遅れ座標を用いた拡張を行い、さまざまな応用を試み、その有効性を確かめています。

不規則な時系列(信号)から定義に従って、レート関数などの大偏差統計に関連する量を求めると、有限サンプル効果という大きな揺らぎの見える範囲の制約を受けますが、この手法では、レート関数などの従う「運動方程式」を近似的に解くことになるので、有限サンプル効果の制約を受けません。

 

講師 宮崎 修次

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京都大学 情報学研究科 複雑系科学専攻 非線形物理学講座