ベイズ統計等に基づく柔らかいデータ解析


相転移現象の一種である臨界現象においてはスケーリング解析が普遍性を抽出する手法として定着していますが、従来よく用いられている最小二乗法の枠組みではうまく解析できない場合が多くあります。スケーリング則は未知のスケーリング関数を含んだ物理では珍しい緩い物理法則だからです。そのようなデータを解析するためには、ベイズ統計等に基づく最近発展しつつある柔軟な統計手法の活用が有望と考えられています。

スケーリング則
スケーリング則の例。右辺のスケーリング関数Ψの形は与えられていない。指数x,yは臨界指数と呼ばれ、特定の現象だけでなく、非常に広い適用範囲があり、普遍性があると考えられている。

スケーリング則は物理現象だけでなく、社会現象など様々な臨界的な現象に多く現れ、重要な法則となっています。そこで、我々は、例えば、スケーリング解析におけるカーネル法などの新しい統計処理手法を持ち込む試みを展開しています。

下の動画は2次元イジングモデルの臨界点付近のビンダー比という量の有限サイズスケーリング解析の様子で、モンテカルロ法で得られたデータから臨界指数1/νや臨界温度Tc、スケーリング関数(水色の曲線)を推定しています。これらの最適なものを探索しているところを動画にしています。

参考文献:
[1] Kenji Harada: Bayesian inference in the scaling analysis of critical phenomena, Physical Review E 84 (2011) 056704.
DOI: 10.1103/PhysRevE.84.056704
[2] Kenji Harada: Kernel method for corrections to scaling, Physcal Review E 92 (2015) 012106.
DOI: 10.1103/PhysRevE.92.012106
助教 原田 健自

京都大学 情報学研究科 先端数理科学専攻 非線形物理学講座