理論神経科学(脳の数理モデル)


aoyagi_neuro進化の過程で生存のために生命が獲得した情報処理に特化した器官、それが脳・神経系であると考えられます。その柔軟な情報処理能力の原理は、今日でも未解明であり、21世紀の重要な研究課題であると言えるでしょう。

その原理を解明することは、工学的応用だけでなく、知能や心に関する理解を深めるために不可欠です。古典的な神経系の理論モデルでは、ニューロンの状態を発火・非発火の2状態で表現し、パターン認識のモデルや連想記憶のモデルなどが良く研究されています。

例えば、シナプス結合に対して経験に基づいた学習を行うことで、不完全なパターンからも全体像を想起する連想記憶が可能になることが示されています。更に記憶可能なパターン数の評価などが統計物理の理論により解析されています。

しかし、最近の生理学実験では神経スパイクの相関(同期等)に情報がコードされているという様々な証拠が見つかっています。更に、様々な周波数の脳波が脳の機能に関係しているとの報告もされており、単に発火・非発火では表現出来ない複数ニューロン間の神経活動の相関のダイナミクスを、機能と関連付けて解明することが必要になっています。

我々は、以上の観点から、もう少し時間的なダイナミクスを表現可能な数理モデル(位相振動子やホジキンハクスレー型モデル)を用いて、神経スパイクの時空間パターンへの情報表現や、脳波の機能的役割の解明を目指した研究を行っています。

さらに詳しい説明はここをご覧下さい。

 

教授 青柳 富誌生

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京都大学 情報学研究科 先端数理科学専攻 非線形物理学講座