時間逆転シミュレーションによるレアイベント・サンプリング

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講演題目『時間逆転シミュレーションによるレアイベント・サンプリング』
講演者:伊庭 幸人
所属:統計数理研究所
日時:平成29年2月17日(金)13時00分~14時30分
会場:京都大学吉田キャンパス 総合研究12号館003講義室(地階)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/yoshida/map6r_y/ の54の建物

概要:
「東京に台風が直撃する」といった,ターゲットの大きさの方が初期値の範囲より小さいシミュレーションでは,東京から逆にパスを生成する「時間逆転シミュレーション」の効率が良さそうである.しかし,こうしたシミュレーションを高次元の確率的な非線形力学系について実現しようとすると,(1)時間逆転のためにニュートン法などで方程式を解く手間が大きい,(2)素朴な方法では正しい確率が再現されない,という問題が起きる.(2)は連続時間極限でも生じ,軌道にそっての拡大・縮小率(エントロピ―生成率)が軌道ごとに異なることに関係している.本研究では,容易に計算できる近似的な時間逆転ダイナミクスでシミュレーションを行い,パスに対して定義した重みでそれを補正することで,(1)(2)を解決できることを示す.
また,経路が長くなると,重みの分布が裾を引き,計算効率が悪化するが,これに対してはパスの分裂複製・消去を取り入れた逐次モンテカルロ法により対応可能なことも示す.実例としては,簡単な非線形確率差分方程式,確率台風モデル,高次元の結合常微分方程式モデル(ローレンツ96モデル)を扱い,これらのすべてについて少ない計算量で正しく確率が再現されることを示す.本研究は,高柳慎一氏(総研大・統計科学専攻博士課程)との共同研究である.
※おまけとして,ベイズ推定ソフトSTANの話,岩波データサイエンスシリーズの各巻の紹介などを行う.